中村菜都子|銀の谷 Valle Argentina No.01~No.05(緑色・Mサイズ)
¥8,500 税込
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霧とリボン企画展《植物と香りのネセセールvol.3〜私の植物相》出品作品。
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「東京には花の香りがしないね。春から夏のヨーロッパでは、草花の香りがあらゆるところに漂っているよ。松、いちじく、レモン、りんご、バラに……」と、ヨーロッパ人の夫が言う。
私が幼い頃、東京郊外の実家のまわりには、松やけやき、メタセコイアが大きく育ち、夏にはむせ返るような芝生の匂いが立ち込めていた。金木犀や沈丁花の華やかな甘さ、ドクダミや山椒の刺激的な香り―さまざまな植物の息づかいを感じることができた。けれども、いつのまにか東京の香りは薄れ、ほとんど無くなってしまったようだ。
この夏、イタリアはリグリア州を訪れたとき、忘れかけていた生き生きとした植物の香りを深く味わった。家族の夏の家の庭先に漂うオリーブ、りんご、レモン、いちじく、そして夾竹桃の香りを、私は小さな箱にそっと閉じ込めた。
……中村菜都子
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文|森 大那
私たちが見るこの世界の景色の中には、線は存在しない。
物の輪郭と凹凸の立体感があるばかりで、平面を横切るあの線という、抽象的で澄ました顔をした、涼やかに細い痕跡はどこにも探し得ない。
しかし、人が線を生み出すとき、描く手は指先に圧力をかけ、媒体からの弾力を感じ取る。
そして、絵を作り出す者が線を重ねることによって抽象性と具体性のあいだを行き来するように、絵を見る者も、平面上の線の様子を読み取りながら、この世界と作品世界を行き来する。
その旅の中では、版画の線のように、作り手が感じた弾力がそのまま鑑賞者にも伝わってくる線と出会うことがある。
小さな箱の中に絵が棲まう「銀の谷 Valle Argentina」シリーズは、赤色の箱に天使が、緑色の箱に植物が現れる。
楽器を持つ天使は家の中に、建物や丘を背景として果実や花を宿す植物は星月夜の下にある。
中村の作り出す線は、貝と糸と金属箔の輝きを引き連れてインクの上に浮かび上がり、古代から生き続ける葉が揺れる、地中海の風景へと私たちを手招きする。
★作品情報
ゴム版画・箱・紙・インク・洋箔・アルミ箔・貝・糸
作品サイズ|11.5cm × 8.5cm
制作年|2025年(新作)
Photo|中村菜都子
★19・20枚目画像は《銀の谷 Valle Argentina》シリーズ全出品作。お届けする作品は《銀の谷 Valle Argentina No.01~No.05(緑色・Mサイズ)》のみとなります。
★プロフィール
中村菜都子|美術作家・版画家
祖母の故郷、長崎を訪れたことをきっかけに、長崎の潜伏クリスチャンの歴史や文化に興味を持つようになる。彼らの数奇な運命を辿りながら、自身のルーツを探る旅をしている。
*画像の色味はできる限り現物に近づけておりますが、ご覧頂く環境により見えは変化します。ご了承願います。
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